北原 糺 氏:奈良県立医科大学 耳鼻咽喉・頭頚部外科学 教授
西川ユカコ:昭和西川株式会社 代表取締役副社長/睡眠改善インストラクター、温泉入浴指導員
2019年6月、奈良県立医科大学の北原 糺教授が論文を発表されました。
この論文を元に、昭和西川は「良性発作性頭位めまい症(以下BPPV:ビーピーピーヴィと呼びます)」改善のためのマットレスを共同開発。
今回は、副社長西川ユカコが北原先生と共に論文の研究や商品開発のきっかけを語ります。
西川:「〜耳石に優しい〜睡眠頭位調節マットレス Mattress for BPPV trouble」と「サポートまくら」を9月から販売しておりますが、お客様からの評判も大変良く、また、お医者様など医療関係者からもお問い合わせをいただいています。ありがとうございます。
この商品は先生が書かれた論文を元に開発しましたが、医学論文を元にして開発した商品は、当社としても画期的な試みでした
北原教授:医学を基礎とするまちづくりMBT(Medicine-Based Town) ※1のおかげですね。MBTは、医療のスペシャリストと企業を結び付けて、まちづくりや市民の生活を向上させるコンソーシアムですが、そこでの昭和西川さんとの出会いで、この寝具が誕生したわけです。
西川:そうですね。そしてこのマットレスは、なんとMBT認定商品第一号※2なんですよね。認定には時間がかかると伺っていましたので、まさか第一号になれるとは。論文の後押しが大きかったと思っています。
先生は2007年耳科学の国際的な学会でその手術法が認められ、権威あるポリッツァー賞を受賞されています。今回の論文は「耳石」と「めまい」の関係について書かれたもので、「ヘッドアップ」の就寝姿勢で良性発作性頭位めまい症(BPPV)の症状が改善されることが論じられています。この論文を発表された経緯をお伺いできますか。
北原教授:4人に1人が、人生で一度はめまいの症状を経験しています。その原因には、メニエール病、立ち眩みなど自律神経系の病気、そして今回の論文で発表した「BPPV」があります。
めまいの症状を持つ患者さんのうち10%の方は原因がわからないままで苦しんでいます。その原因不明の症状の半数は、耳石の病気「BPPV」という統計があります。これを何とかしなければならないと思ったんです。患者さんにも医師にも耳石のメカニズムを啓蒙しなければいけないと。
西川:確かに「BPPV」というのは聞きなれない病気です。耳の内耳にカルシウムでできた「耳石」があって、それが何かの拍子に三半規管に転がり落ちるのでしたね。
北原教授:はい。水平のお皿の上に耳石があるとイメージしてください。横になって寝ると、傾いてお皿の上の耳石が落ちるわけです。落ちた耳石が三半規管をかく乱させてめまいを引き起こすのが「BPPV」という病気です。高齢者のめまいのほとんどはBPPVと考えていいでしょう。
西川:お薬では治らないのでしょうか。
北原教授:残念ながら、耳石が溶けたり、剥がれなくなったりする薬はありません。大事なのは、夜寝る時に頭が傾いて耳石が落ちるのですから、頭を高くして寝ることで耳石が落ちるのを防ぐことです。
西川:実際にヘッドアップした患者さんはめまいの症状がなくなったのでしょうか。
北原教授:44名の患者さんに協力していただきました。症状がなくなっただけでなく、原因と病名が分かったことを喜んでいただきました。私個人としては、まず医者に相談する前に昭和西川さんの「睡眠頭位調節マットレス」に一定期間寝ていただいて、それで改善されない時に来院してほしいと思っているくらいです(笑)。
西川:その「睡眠頭位調節マットレス」ですが、開発の際に多岐にわたりご指導をいただきました。
北原教授:この治療のポイントは、就寝時の頭の角度を45度に保つところにあります。最初は家にある座布団やクッションを積み上げればいいと思っていたのですが、ずれ落ちたり崩れてしまったりと上手くいきませんでした。それに、当初から懸念していた通り、腰や首も痛くなってしまいました。
西川:私たちも傾斜については苦労しました。実はマットレスは30度で、専用のまくらを合わせて使うと45度なんです。背中までを緩やかにして、頭の角度が最終的に45度になるように工夫してあります。こうすることで寝にくい角度を少しでも和らげて、肩や腰の負担も軽くなるようにしました。
寝具メーカーとして培ってきたノウハウを総動員し、身体を支えるウレタンも耐久性の高いものを採用し、フラットにすればシングルサイズのマットレスとして普段でも使えるようになっています。
北原教授:剥がれた耳石がすぐに代謝消失してしまう人や、新たに耳石が剥がれない患者さんもいらっしゃいます。そのために、症状が出なくなった時や治った時にも通常の睡眠用として使えて、症状がまた出てきたら治療用としても使える、この商品のアイデアは素晴らしいと思います。
西川:先生は「めまいセンター」の所長も兼任されていていますね。
北原教授:めまいの症状は、耳鼻科だけでなく脳外科・脳内科・精神科など様々な診療科が関わってきます。患者さんもどの科に行けばいいのか分からないんです。患者さんも紹介するドクターも、めまいの症状で困った時に活用できる場所を提供したいと思い、「めまいセンター」を立ち上げました。大学病院で「めまいセンター」というのは、今のところ北里大学と奈良医大だけです。
西川:受診した時に、問題があれば必要な診療科を紹介していらっしゃるのですよね。患者さんにとっても無駄な時間をとらなくていいですし、何より心理的に安心感がありますね。ところで「BPPV」はまだ認知度が低い病気ですが、診断や治療の課題などはあるのでしょうか。
北原教授:耳石が動いているのを、画像で見せることができないんです。患者さんのお話を聞いて「おそらく耳石だろう」という診断をするわけです。エコーのような画像で耳石の動きを「見える化」することが、今後の課題だと思っています。最終的には耳石が剥がれない薬、加齢によっても耳石を安定させることができる治療も医師としては追求したいと考えています。
「睡眠頭位調節マットレス」は、「BPPV」の認知度を上げていくステップとして有効的だと思っています。原因不明のめまい症状を訴えている患者さんの半分が「BPPV」だとすると、100人いたら50人です。世界中に患者さんがいるわけなのですごいことですよね。大ヒット商品になりますよ。
西川:本当に、原因不明で長年悩んでいた「めまいを自分で治せるかもしれない」というのは革新的ですよね。
私たちは、気力・体力の向上に繋がるための良い睡眠、「健康」という大きな枠でお客様に貢献してきました。そして、今回の共同開発では「自分の症状を自分で治せる」という新しいソリューションにとてもワクワクしています。
また、今回、新たに治験という形で医療とタイアップしたことで、昭和西川は会社としても1つ上のステージにいけたと感じています。
北原教授:未病のために睡眠は非常に大切で、めまいも睡眠にとても関係していますね。
今回のコラボレーションで昭和西川さんが患者さんに対して、少しでも快適に病気を治していただきたいという熱意を持ってご協力をいただいたことをとても感謝しています。
「睡眠頭位調節マットレス」が効果的に使える病気は他にもあると思いますので、今後に期待しています。
西川:そうですね。
先生、本日はありがとうございました。
※1 MBT(Medicine-Based Town)とは、医学を基礎とするまちづくりを目的として、新産業の創生、地方創生を行うコンソーシアムです。医師・医学者と企業の連携による少子高齢社会に対応したまちづくりを行っています。
※2 MBT(Medicine-Based Town)ロゴマークは、医学に基づいた産業創生、地方創生、少子高齢社会のためのまちづくりへの貢献が期待されると、一般社団法人MBTコンソーシアムが認定した商品につけられるマークです。
〜耳石に優しい〜睡眠頭位調節マットレス Mattress for BPPV troublebr
https://www.nishikawa-store.com/c/shikifuton/2228489000931
サポートまくら
https://www.nishikawa-store.com/c/makura/2228489001259
■奈良県立医科大学 耳鼻咽喉・頭頚部外科学 教授
北原 糺先生
めまい・難聴の歴史ある教室、奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室にて2014年より教授。
2016年より奈良県立医科大学附属病院めまいセンター センター長兼任として現在に至る。
http://www.naramed-u.ac.jp/~oto/department/greeting.html